moratorium

うってつけの日々

眠れずに、朝の5時になってしまった。
ふと、海が見たいと思ったので、そのまま電車に飛び乗って、海に出掛けた。

薄く雲が立ち込めた空、海はひどく暗く見えた。私が来たかった海だと思った。そのまましばらく海を見ていた。砂浜は硬く、湿っていて、レジャーシートをひいて、そして座った。
灰色の海。冬の始まりの海だった。

私は一人でここへ来て、そしてきちんと独りだと思った。こんなところまで一人で来られるようになってしまった。こんな遠いところまで。
圧倒的な寂しさと共に、独りでいられることにひどく安堵していることに気づいた。
なんだか涙が流れてしまって、それが風に吹き付けられてひどく冷たかった。拭ってくれる手も、包んでくれる腕も、連絡する宛などもなにもなかった。
ただ、私だけがあった。


山奥で生まれ育ったのに、いつも帰りたいと思うのは海。いつでも海に帰りたいの。
灰色の海は、とてもあたたかそうに見えた。