moratorium

うってつけの日々

温室の傲慢

ある出来事から、私はようやく人生を引き受けた。

それは、世間的にいうとただの失恋だったのだが、そこで私が得たものはおそらくただ恋を失っただけではない。私はその経験から、自分の人生をようやく引き受けることができた。

非常にぬるい温室で、人との関係の間にあいまいな膜を張って生きてきたので、人生とはぼんやり自分の思うとおりに進むのだと、それを疑うことなく生きてきてしまった。

しかし現実はすごい。容赦がない。所詮私は、ただちっぽけな一人の娘にすぎなくて、人と欲望を交えた生身でのぶつかり合いに、ただただ圧倒されるだけだった。

ひどく傷ついたこの経験から、私はひどく傲慢だったことを知った。

人生はなんだって起こりうる。

文字にすると、まったくもってその通り、という感じだが、私は心の底からこの言葉を理解している。

 

それだけ、たったこれだけの経験が、私をようやく私にした。

ようやく笑えるようになってきた。先々これでよかったと思えるように、せいぜい笑い飛ばしていこうと思う。

傷だらけも悪くない。

治癒能力には自信があるんだ。